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僕が猫と暮らすようになって、変わったこと。その最たることは、意外にも何かとよく考えるようになったことだった。子供の頃から、考えることは親を含めた周りの誰かに常に委ねてきた気がする。面白いと思ったら飛びつき、好きになったらこだわり、気持ちいいと感じたら流されてみる。


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そんな生き方をしてきて、いい歳になって、雄のロシアンブルー と出会ったわけである。彼は日本語も英語もタイ語も話さないが、いつもどこかを見つめることで僕に伝えてくる。忘れ物をしてきたのは仕方ないから、せめて何を忘れてきたのかを思い出しておけと。音楽、写真、エッセイ…。僕の心の中のちょっとした変化やあいまいな忘れ物は、そんなことでしかアーカイブできないが、少しは自分のことを考えるみる機会にはなるはずだと思った。


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誰かの代わりに、誰かのメッセージを伝える。そんな仕事を長い間続けていると、いったい僕自身は誰に何を伝えたいのだろうかと考えてしまうことがある。それを少しはっきりさせてみようかと、このアーカイブをつくることを思い立ったのだ。仕事柄、言葉で伝えるのがもっとも手慣れているのかもしれないが、写真という表現にもトライしてみることにした。写真を撮るのは子供の頃から好きだったが、プロのカメラマンと一緒に仕事をするようになって、自分が撮る写真があまりにも見劣りするので撮らなくなってしまっていた。でも、友人であるカメラマンに「写真は愛情だよ」と勇気づけられたので、このアーカイブでは、写真が言葉と同じくらい大きな意味を持っているかもしれない。
そしてベースを弾くことは、僕のライフワークである。音楽を好きかと聞かれたら、もちろん好きだと答える。自分では聴くことよりも弾くことにこだわってきたような気がする。だからレコードやCDのコレクションにも妙な偏りがあるし、“音楽夜話”のような総花的なうんちくを語れる知識もない。でも、自分のフィルターを通して音楽で何かを伝えることはできると思う。

吉田一紀
IKKI YOSHIDA