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Vol.1 プラトゥーナムでお買いものエクササイズ

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バンコクに通い始めた最初の頃、買い物をするのが嫌だった。というのは、まずバーツという貨幣になじみがなく、何が安いんだか高いんだか判断できなかったからだ。それでも少し慣れてきて土地勘がついてくると、いろいろな場所に足を伸ばしてお金を使ってみたくなってくる。そしてその土地で何が売られ、何が消費されているのかを知りたいものだから、恐る恐る近場の市場に向かうことになる。その中でもプラトゥーナム市場は観光案内にも書かれていることが多く、バンコク都内にいくつかある市場の中でもアクセスしやすい市場だった。

プラトゥーナム市場は、乱暴な比喩をするなら、大きなアメ横のような市場に感じた。数え切れないほどの商店がさほど大きくないブロックの中にひしめき、どの店先にも歩道をふさぐほどの商品が、陳列というか積まれている。売られているもの実に様々だ。民芸品、カジュアルウェアー、パジャマやタオルや下着や靴下、靴、旅行バッグ、電化製品、携帯電話、怪しいブランドグッズ…。この市場での買い物で何が楽しいかというと、それは値段交渉だと書いているガイドブックが多い。でも、僕はそれが不得意で、バーツの価値がいまいちピンとこないまま、言い値で買い物をしていた。ただ、物を購入するという行為が、本来はアナログな行為であるということを、僕はこのプラトゥーナム市場で思い出した。ネットやテレビの通販で買い物しなれた昨今、バンコクにはまだ買い物本来のダイナミズムが息づいている。

ところでバンコクは日本に比べて物価が安いという印象があるが、それは庶民レベルのライフスタイルにおける物差しでなら言えることだと思う。確かにバンコクで暮らす人たちが使う屋台や食堂は、とても安い料金でおいしいものを食べさせてくれう。でも、ちょっとしたスーパーで売っている商品の値段は日本の感覚と大して違わない。ましてこぎれいなレストランや居酒屋に入れば、まったく日本とほぼ同じ料金設定の店が多い。だから日本食ばかり食べていると、財布の中の1,000バーツはどんどん減っていくのである。バンコクは、あくまでも庶民~中流レベルの暮らしが安上がりなのだと思う。僕はこんなお買いものエクササイズを経て、どんどんケチになっていくのである。

Vol.2 味覚に刺激を求める食文化

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タイ料理というと辛いというイメージが強いが、これはあながち間違いではない。ただ、全部が全部激辛かというとそんなことはない。実際、トムヤンクンもマイルドなのがいいか、ホットなのがいいかを選ぶことができる。グリーンカレーもしかり。辛いことは辛いが、どちらかというと爽やかさが際立ち、まるで罰ゲームのような辛さのものを食べている人はマイノリティだと思われる。

タイ、特にバンコクが位置する中央部はチャオプラーヤー川が作り出した肥沃なデルタエリア。したがって、おいしい米や野菜、そして魚等が、ふんだんに料理に使われる。トムヤンクンを始め、ヤムウンセン(春雨のサラダ)、カイヤッサイ(ひき肉のオムレツ)などが代表的なメニュー。いずれもナンプラーやジャスミン、パクチーといった調味料、香草などで、料理そのものに適度な辛さにコクを加えた独特な味覚に仕上げてある。いわゆる高級タイキュイジーヌを出すレストランに行くと、ランチでも1.000バーツ、2,000バーツを払うことになる。この手の店だと、店も器も美しいし、盛り付けも余所行きの顔をしていることが多い。ただ屋台との味の差はどうかと聞かれると、上手く説明できない。それがタイ料理の面白いところ。ナンプリックという塩辛的なディップは有名だが、こんなのが、屋台でも高級レストランでも出てくる。どちらも辛いし、僕にはよくわからないのだ。

タイ人と一緒に辛い料理を食べていると大汗をかいているから、「辛くないの?」と聞くと、「辛いよ。でも、これが気持ちいいんじゃん」というような答えが返ってくる。脳は辛さに刺激されることによってドーパミンを生成する。その快感を求めて、彼らは辛い物を“ヒーヒー”言いながらでも食べるのである。味覚も刺激。僕は辛さの刺激が、どちらかといえば苦手である。